馬の胃潰瘍について
馬は、自然界の外敵から身を守るため、神経質なくらい敏感に周囲の状況に気配りをして安全を確認しています。その際には大きなプレッシャーを感じています。また日々のトレーニングや馬運車輸送などでもストレスを感じると言われています。 人と同じくストレスを感じると馬も胃潰瘍を発症します。乗馬は競馬などに比較すると発症率は低いですが内視鏡検査を行なった結果では、胃潰瘍の発症率が40~77%位であると言われています。 馬は人と違い食べ物を食べた時に胃酸を分泌されるばかりでなく食べていない時でも胃酸が分泌されています。また餌は主に濃厚飼料が与えられていますが草などに比べると 胃酸の分泌が多くなります。そしてトレーニング中や輸送中でも胃酸が分泌され続けます。

馬の胃の構造にも特徴が有ります。馬の胃は食道部分と同じ重層扁平上皮からなる無腺部と他の多くの動物と同様胃腺を有する腺部に区分されます。不規則な隆起線であるヒダ状縁は、胃の扁平上皮部分(無腺部)と腺部を隔離しています。 無腺部と呼ばれている部分は粘液等のバリアーに守られておらず何らかの原因で酸が下から上がってきたり、 逆流してきた場合は胃粘膜が侵され胃潰瘍になりやすくなります。馬の胃潰瘍のほとんどは図のように無腺部とヒダ状縁に発生します。
主な症状
- ・疝痛
- ・食欲不振
- ・ボディコンディション不良
- ・間欠的な下痢
- ・被毛粗剛
- ・能力の低下
治療方法
一般的に内視鏡を使用しての確定診断を行って後、抗潰瘍薬を投与します。抗潰瘍薬にも種類が有りますが、近年は人と同じくプロトンポンプインヒビターの治療効果が高く、安全に使用されます。この薬品は要指示薬であるので獣医師に相談しましょう。
馬の胃潰瘍
胃潰瘍の重症度は多様であり、炎症のみで上皮は正常な状態から、広汎性の糜爛及び潰瘍、\表在性糜爛、出血性糜爛、中心性壊死を伴う深部潰瘍までみられる。穿孔が起こることがあり、その場合は、致命的である。 発症部位や重篤度は多岐にわたることから、研究者や臨床家の間で表現を統一し、治療の指針とするためのスコアリングシステムが提案されている。国内における臨床試験もこのスコアリングを基に評価している。

潰瘍グレード0
正常な粘膜上皮(発赤及び過角化がみられることがある)

潰瘍グレード1
小さな単発性または、多発性潰瘍

潰瘍グレード2
大きな単発性または、多発性潰瘍

潰瘍グレード3
深部潰瘍形成を伴う広範な(しばしば融合した)潰瘍
図2
※Andrews et al, Efficacy of omeprazole paste in the treatment and prevention of gastric ulcers in horses., Equine Veterinary Journal (Suppl.29) : p.81-86, 1999
出典:図1、図2 メリアル・ジャパン株式会社