給餌計画1 電解質の摂取について
今年の夏も暑くなるとの長期予報が出ていますが、日本は高温多湿な国で最近は都市環境の変化や気候変動の関係で昼夜、温度、湿度環境に悩まされています。
馬も、我々人間と同じように全身に汗腺をもつ数少ない哺乳動物のひとつだそうです。
また馬は人間と並んで最も多く汗をかく動物の一つですが人間と同様、もっぱら発汗によって高くなりすぎた体温を下げようとします。馬は一回の競馬で10リットルの汗をかくと言います。だいたいバケツ一杯分の量になります。汗をかくことで皮膚表面から蒸発させる気化熱の現象を利用しています。熱を持った筋肉を冷やすために大量の汗をかく必然性が有るわけです。温度の上がった筋肉は汗で冷やされ持久力が高まります。(ちなみに犬は口を開けて舌を出し、ハアハア喘ぐことで水分を蒸散させて体温を下げようとしています。)
馬は汗をかくと首や、股などに白い泡のように付着します。馬の汗にはある種の物質(ラセリン)が他の動物よりも多く含まれています。ラセリンには界面活性作用、すなわち石鹸と同様の作用があります。この物質があることで汗が被毛の間をうまく浸透し、全身に行き渡るようになっているのです。
あの泡はその物質が馬の汗の中に多く含まれることで生じるものなのです。

馬では、ギャロップ時に安静時の40~60倍の熱が産生されると言われています。サラブレッドが競馬を一回走ると約2000キロカロリーの熱が産生されますが、もし仮にこの熱がすべて馬体に蓄えられたとすると、体温はまたたくまに5℃は上昇する計算になるそうです。馬が運動をすれば体温が上昇します。これは筋肉の活動で熱が発生するからです。
熱の発生によって体温が上昇したものをそのままにしておけばやがて運動能力は低下し、限度を超えれば体そのものに異常をきたします。もちろん実際にはそんなことにはなりません。馬はせっせと汗をかいて体温を下げているからです。
このように汗をかく機能に優れる馬ですが、それでも暑さにはあまり強くありません。汗をかくことで失うミネラルの濃度も人間よりも多いことも知られています。馬が大量の汗をかいたあとは水分・電解質をきちんと補給してあげることが大切です。
主な電解質の役割
電解質(イオン)の役目は、身体を構成している細胞の浸透圧を調節し、筋肉細胞や神経細胞の働きに関わっています。また運動時、運動後の身体にとって重要な役割を果たしています。
代表的な電解質として、ナトリウムやクロール、カリウム、カルシウム、マグネシウムなどがあります。これらは5大栄養素としてあげられるミネラルに属しています。
- 主な電解質の役割
- ◎ナトリウムイオン (Na+) 身体の水分量および浸透圧の調節、神経の伝達、筋肉の収縮など
- ◎カリウムイオン (K+) 神経の伝達、筋肉の収縮など
- ◎マグネシウムイオン (Mg2+) 筋肉の収縮、酵素の活性化など
- ◎カルシウムイオン (Ca2+) 神経の伝達、筋肉の収縮、血液を固めるなど
- ◎クロールイオン (Cl-) 身体の水分量および浸透圧の調節、胃酸の分泌など
このように、電解質には様々な役割があり、すべての電解質(イオン)が相互に作用しあうことで、馬の運動活動をささえていますので調教の後や夏場を含めて、栄養学的には常に給餌計画には含まなければなりません。